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ジョナサンへの手紙

皆様へ。

プレイバックシアターの創始者ジョナサン・フォックスは僕にとって、第一回カンボジア遠征の時からのよき理解者です。

彼に今回のカンボジアでの経験について手紙を書きました。

読み返してみて、内容を皆様にもシェアしたいと思いましたのでよろしければどうぞご覧くださいませ。

第5次カンボジア遠征は来年後半に予定しています。

事前に2回のチームビルド合宿を通じてオーシャンズプロジェクトの考え方をシェアし、プレイバックシアターやエンカウンターグループ、ダンスムーブメントなど人間の本質に接近する為のメソッドについてトレーニングをします。

関心のある方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

オーシャンズチームはカンボジアの人々を援助しに行くものではありません。

我々がそこで生きる為に向かいます。

実際のところ、緑豊かなカンボジアの田園地帯に入り、貧しくともシンプルに生きる人々とともに生活することで、自分自身の本質的なエネルギーに再び触れ、「援助」されるのは我々の方なのです。

ですので、深い敬意を持って、アンコールワットを生み出したクメール民族の精神を引き継ぐ人々の国に降り立つ事になります。

近い将来、皆様とカンボジアへの冒険の旅をご一緒できるご縁を心から楽しみにしています。


オーシャンズ・プロジェクト・ファシリテーター  橋本久仁彦





ジョナサンへ。

お元気でしょうか。

いつも我々のカンボジア遠征を応援してくださってありがとうございます。

お蔭様で10月11日、第4次オーシャンズ・カンボジアメンバー10名は無事帰国いたしました。


今回は、日本カンボジア友好学園(CAMBODIA-JAPAN Friendship Middle And High School)でプレイバックシアターや日本語を教えた後いつもとは違った特別な出来事がありました。


1975年から4年間続いたポルポト政権の恐怖政治を生き抜いた今年72歳のコンボーンさん(Mr.KONG VORN)が、もう2度とこのような事が起こらないようにという願いを込めて自分のふるさとであり、カンボジアで最も貧しい地区とされているベトナム国境近くのプレイベン州(Prey Veng Province)にこの学校を建てました。


運営の為の財源や良い教員の確保が大変なので、コンボーンさんは「朝起きてから夜ベッドに入るまで、学校のことを考え続けている」とおっしゃっています。


学校の人気は高く、30キロ四方の地域から通ってくる生徒がいるほどです。


11,2歳から17,8歳までの生徒は、現在800名ほどで、家族全員の期待を一身に背負って入学した為、誰もさびしくても途中で勉強を投げ出したりはしません。



夢をかなえてよい仕事に就き、家族に仕送りする為に懸命に勉強しています。


我々オーシャンズチーム(この遠征のためにトレーニングしてきたプレイバックシアターのチーム)も、彼らの夢や、家族への気持ち、生活の苦しさ、学校で学べたり、仲間と付き合える楽しさを演じてきました。


4回目の訪問となった今回は偶然カンボジアのお盆の時期と重なっていました。


この儀式的な時期には、カンボジアの人々はふるさとの村に帰って、お寺に食べ物を持って集まり、お坊さんたちとお経を唱和した後、先祖たちにお供えして供養するのです。


我々オーシャンズチームもコンボーンさんに招かれて、地平線まで緑の田んぼが広がり、ところどころにヤシの木が立っている雄大な景色の中、細いでこぼこ道を車でひた走り、奥地の村の石造りのお寺にぎっしり集まった、200名以上の地元の人々とともに座ってセレモニーを経験しました。


人々とともにお経を唱和し、線香を上げ、カンボジア式に3回お辞儀をして遠いご先祖様や亡くなった人々に、炊き上げたばかりの白米を捧げました。


我々にとっては初めて入ることのできた、最深部のカンボジアに生きる人々のセレモニーでした。


そんな折、コンボーンさんと授業の事を相談していた田中聡君(オーシャンズ・プロジェクトのパートナーでシアター・ザ・フェンスメンバー)が、話の流れで、コンボーンさんのポルポト時代の経験にも関心があることを伝えたところ、なんと、「行ってみよう」と言ってくださったのです。


今までは言葉では説明してくれても、実際に現場に行くような雰囲気ではありませんでした。カンボジア人の多くが語りたがらない非常に辛い経験だし、実際に危険でもあるからです。


しかし、コンボーンさんの我々への信頼の気持ちを強く感じたことと、カンボジアを本当に知る為には、この旅は避けて通れないと考えたオーシャンズチームの10人は、通訳をしてくれているこの学校の卒業生ラッタナ君(Mr.RATANA)とともに車(バン)に乗って出発したのです。


4時間ほどドライブしながら、当時、共同通信の現地通訳だったコンボーンさんが、ポルポト軍(Pol Pot)(クメール・ルージュ Kjmer Rouge) によって収監されていた場所を訪れました。
ここでは連日、「お前は字が読めるのだろう?」と尋問を受けましたがコンボーンさんは必死で字が読めない文盲の農民の振りをしました。


コンボーンさんは収容所の畑で強制労働をさせられながら、字が読める事がばれた人たちが近くの林へ連れて行かれてハンマーで殴り殺されて穴に放り込まれるのを何度も見ているからです。


それから我々はメコン川沿いに走り、プノンペンから着の身着のままで強制移動させられた後、家族と引き離された寺院や、殺される直前に裸で、後ろ手に縛られたまま逃走したキリングフィールドのすぐそばまで実際に赴き、現場に立ちながらコンボーンさんが、自らの体験を振り返るお手伝いをすることができました。


実際にその場所にいた1975年以降一度も訪れた事のない現場に、コンボーンさん自らが再び立ち、フラッシュバックするつらい感情に心身をさらし、逃走時に鉄砲で撃たれた太ももの傷や、兵士がナイフを2度首筋に突き立てて穴に放り込む様子まで事細かに表現してくださいました。


時に涙を流し、時に両手を合わせて拝みながら、我々10名の日本人のグループに、身振り手振りで直接体験を伝えてくださったのです。


現場は、カンボジア国内ではまだ表面に現れていないキリングフィールド(人々を殺害し複数の穴の中に埋めた場所)で、周辺には、ポルポト軍に協力した人々が住んでいる可能性があります。


そのため、人目につかないよう警戒しながらの旅となりました。


我々にとっては、非常に重い、多くの人々の魂を感じながらの厳しい旅となりました。


プレイバックシアターや夜遅くまでのメンバー同士の語り合いは、むしろ我々日本人がこのカンボジアでの特殊な体験の中に意識的に立ち続けるために大いに役立ちました。


なぜ、我々とともに現場に再び立つ危険を冒すのかという問いにコンボーンさんは「絆」と日本語で一言応答し、我々が帰国する日には、我々に両手を合わせながら(カンボジアの挨拶の形)微笑んで「安心しました。」と言ってくださいました。


この経験で、不思議な事に我々日本人メンバーの言動やプレイバックのアクティングは飛躍的に深く、本質的な力を持つようになり、それぞれの人生に反映し始めています。


トレーニングや教室の場とは違った次元での体験と学びであったのだと思います。


また、首都プノンペン(Phnom Penh)にあるトゥール・スレーン(クメール・ルージュが子供を含む約2万人の殺戮のために使った学校の校舎で、当時のままの姿で見学できるようになっており、処刑される直前の人々の顔写真が展示されている・Tuol SlengGenocide Museum)を訪れたときにも、今までになかったことがありました。


しばらく我々を見つめていたクメール人のおじいさんが声を掛けて来たのです。
なんと彼は、この虐殺の生き残りの7人のうちの一人でした。
彼が指差す展示場に掲げられた一枚の白黒の写真の中に、他の6人とともに立っている彼のやせ細った写真がありました。


彼はコンボーンさんと同じように、身振り手振りで、彼が閉じ込められていた、たたみ一畳ほどの狭いコンクリートブロックの仕切り部屋の中に入って、当時の模様を語ってくれました。


拷問のときに穴をあけられた足の親指の傷を示しながら、真剣な表情で語る痩せたおじいさんの姿を、我々はただ息を呑みながら見つめていたのでした。


過去3回のカンボジア遠征では、主として子供たちや、シェルターに避難した極貧の女性たちを訪ねて語り合い、プレイバックシアターを通じて深い感情に触れる交流を行ってきましたが、4回目にしてオーシャンズ・カンボジア・プロジェクトは新たな段階に入ったと言えます。


また、メンバー全員と僕自身の人生にとっても重要なターニング・ポイントとなりました。


今回の旅でもやはり我々は、人が生きていく真剣さや、深くコミットしあった時に互いに感じることのできる信頼の気持ちや絆の感覚を実感することができました。
遠征を実施して本当に良かったと思います。
 

僕はジョナサンが暖かいまなざしでいつも見守って下さっている事を感じています。


オーシャンズチーム全員を代表して、今回の遠征のご報告とともに感謝の気持ちをお伝えしたいと思いました。


今後ともよろしくお願いいたします。


    オーシャンズ・カンボジア・ファシリテーター   橋本 久仁彦
 


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